雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 近くのファストフード店に入り、二人は二階の窓際の禁煙席に座った。


「俺、買ってくるから。待ってて? いいって! 誘ったのこっちだから」


 小銭を出そうとした伊万里を制して、男子生徒は軽快に階段を降りて行った。

 奢ってもらうなんて、申し訳ない。後でちゃんとお金を払おう。そう思い伊万里はソワソワしながら待つ事にする。周りには自分達と同じような高校生が多くいた。


「はい、どうぞ」


 トレーに飲み物を乗せて、男子生徒が戻って来た。伊万里の緊張がMAXになる。差し出されたオレンジジュースを受け取り、小さく頭を下げながら財布を開けると、また止められた。


「あぁ、ほんといいから。っていうか払わせて? じゃないと俺の気が済まない」


「……すいません」


「いやいや、こっちこそ。無理矢理誘ったみたいでごめんね?」


 伊万里はブンブンと大きく首を横に振る。
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