雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 カキーン――。

 耳に入って来たのは、相手校のスタンドの歓声だった。ヒットを打たれ、匡は呆然とマウンドに立ち尽くしていた。

 試合終了のサイレンが鳴り、エビ高野球部はあと一歩のところで、甲子園出場を逃した。スタンドに向かって横一列に並び、深々と頭を下げる野球部員。その中で、匡は一人、いつまでも頭を上げなかった。

「よくやった!」「お疲れ様!」と拍手を送るスタンドの生徒達。匡は他の部員に促されて、ようやく顔を上げる。肩を叩かれながら、匡は力なく歩いていく。

 千咲希は、そんな匡の姿を見ながら思っていた。責任感の強い匡は、きっと自分を責めているだろう。俺のせいだと。
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