雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「……なんだよ」


「帰らないの?」


「帰れよ、さっさと」


「たっくんが帰ったら、私も」


「その、たっくんって言うのやめろ」


「じゃあ、なんて呼べばいい? 匡くん? ダメだよ、言いにくいじゃん」


 匡は、ハァーとわざとらしく溜め息をつく。


「いつまでも、ガキの頃のまんまじゃねーんだからな」


「わかってるよ。たっくん、すっかり男っぽくなったもんね」


「何なんだよそれ、慰めてるつもりか?」


 苛立ちの混じった匡の声に、千咲希はハッとした。


「可哀想な俺を、慰めてあげようと思って来たんだろ?」


「可哀想なんて、私……」


「もう俺に構うな」


 そう言って、匡は立ち上がった。千咲希も立って、長身の匡を見上げる。
< 211 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop