雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 美容室から帰宅した那子は、制服を着替える事もせず、買ってきた履歴書を机の上に広げた。ボールペンで名前やふりがな、性別を書いた後、生年月日のところにきて、思わずその手が止まる。

 一年遅れで高校受験をした那子は、高校三年でありながら、実のところ一歳年上だった。学生時代の一歳差は、かなり大きな差を生む。誰一人として、那子の実年齢を知らない高校に入学しながら、那子自身が一番その差を埋められずにいた。

 ――自分より年下の子と仲良くするなんて……無理。
 
 那子は端からそう決めつけて、入学初日から金髪とくるぶしまであるロンスカで登校した。一昔前というより、まさに二昔前くらいのヤンキースタイル。それは那子にとって、人を寄せ付けない為の予防線であると同時に、密かな憧れでもあった。

 中一の頃、瞳子からホット〇ードという漫画本を借りて以来、その世界観にすっかり魅了されてしまったのだ。自由がないお嬢様育ちの那子にとって、その漫画の主人公は、何をするにも自由で、とてもかっこよく見えた。
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