雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「この方が尾行しやすいと思ってさ」


「えっ?」


「浴衣カップル設定で」


 悠李の『カップル』という言葉に反応し、萌果は今更ながら、ドキドキしてしまう。


「んじゃ、尾行開始」


 悪戯っぽく微笑んだ悠李に、萌果の胸が小さくトクンと跳ねた。それを誤魔化すように、萌果は悠李に背を向ける。


「お兄ちゃん、コンビニで待ち合わせするらしいから。早く行かないと」


萌果の白いうなじを見ながら、悠李は「はいはい」と返事をする。年下に振り回されるなんて、初めての経験だが、不思議と嫌ではなく、むしろ楽しんでいる悠李がいた。
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