雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 悠李の案内で辿り着いた公園は、こじんまりとした児童公園で、滑り台やブランコも可愛らしく感じられた。


「じゃ、萌果達はあっちで話してくるから。悠李はそのへんにいて?」


 当たり前のように言うと、萌果は伊万里を連れて公園の奥へと歩き出そうとした。


「え、ちょっと待って。俺、もう帰るけど?」


 自分はもう用済みだと思い、帰るつもりだった悠李は、萌果を呼び止める。髪飾りを揺らして振り向いた萌果は、ニッコリと微笑んだ。


「萌果と伊万里みたいな可愛い子が二人でいると、夜道が危ないでしょ? ちゃんと送ってってね?」


「……あ、ね」


 悠李は反論する気にはならず、軽く受け流すと肩をすくめた。そして近くにあった、パンダのスプリング遊具に腰掛ける。


「俺を何だと思ってんだ?」


 誰に言うでもなく、一人愚痴をこぼすと、何だかおかしくなってきた。年下に指図され、素直に従っている自分がいるなんて……。
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