雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 また千咲希も一人、トボトボと帰り道を歩いていた。春翔から謝罪のLINEが届き、後輩のトラブルはなんとかなったようで安心した。

 穂香からは、これから帆鷹とラーメンを食べに行くという興奮気味のLINEがあり、千咲希もつい笑顔になる。

 匡にも彼女がいるようだし、これでみんな幸せになればいいなと思う。

 彼女がいるから、匡は自分に話しかけるなと言ったのだろう。彼女に誤解されたくないから。それが匡の不器用な優しさなのだ。

 ――それならそうと、ハッキリ言ってくれればいいのに……。でも、そこがたっくんらしいところだけどね?

 千咲希はそんな事を思いながら、人混みの中をゆっくりと歩いていた。
< 289 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop