雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「髪色も髪型も違うから、履歴書の名前見るまで、全然わかんなかったよ。俺の事、知らない? 同じ学年の江坂悠李(えさかゆうり)」


 見覚えのない顔でフルネームを言われても、那子には全くピンとこない。


「一年も二年もクラス違ったから、そっちは知らないか」


 悠李はあっけらかんと言い、悪戯な笑顔を向けた。

 ――同じ学校の、同じ学年の奴が、先にバイトしてたなんて……最悪。

 那子がバイトを断ろうと、口を開きかけた時だった。


「桜川って……。俺等より、いっこ上だったんだ?」


 悠李に言われて、ハッとする。こんな事なら、生まれ年を詐称すればよかったと、思ったところでもう遅い。一番知られたくなかった連中のひとりに、秘密がバレてしまった。よりによって、保健室登校が打ち切りになったこの時期に、だ。
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