雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 平日ではあるものの、夏休みという事もあってか、親子や学生のカップルで混雑している映画館。何を観るかも決めてないままやって来た夏成実は、上映作品一覧のパネルに向かってゆっくりと歩き出した。

 ――ドンッ。

 よそ見をして歩いていた夏成実の肩に、勢いよく誰かがぶつかり、その拍子に相手が持っていたアイスコーヒーが、フロアーに落ちてこぼれた。


「あっ、ごめんなさい」


 咄嗟に謝った夏成実に、ぶつかった相手が容赦なく言う。


「ったく、どこ見てんだよ!?」


 どことなく聞き覚えのある声に、夏成実は急いで声の主を見た。そんな夏成実の顔を見て、相手は驚きに目を見開く。


「痴漢女!?」


「チビザル!?」


 お互い思わず口にして、功は不愉快な顔を更に歪ませた。
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