雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「ちょっと、それ返してよ」


 那子の思考はちょっとしたパニックを起こして、バイトの面接なんて事は、すっかり頭の中から抜け落ちていた。

 那子が履歴書を奪い取ろうと手を伸ばすと、悠李はひょいとそれをかわして、意味深な笑みを浮かべる。


「採用決定」


「えっ?」


「取り敢えず明日からバイト入って。ゴールデンウィークで、人手足りないんだよね」


「ちょっ、勝手に決めないでよ」


「心配しなくても、秘密は守るから安心して。但し、桜川がここでバイトしてくれたら、ってのが条件な」


 究極の選択を迫られて、那子の心は揺れに揺れた。
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