雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「その顔、何?」


 功に突っ込まれ、夏成実は「べーつに」と、意味深っぽく笑う。


「どうせガキとか思ってんだろ?」


「あ、バレた?」


「うるせーよ」


 功は言いながら、さっさと買って来いと言わんばかりに、手をシッシッと払った。

 両手にアイスコーヒーを持って戻ってきた夏成実は、そのひとつを功に差し出し、それを受け取りながら功が訊く。


「そっちは誰かと待ち合わせじゃねーの?」


「えっ? ひとりだけど?」


「ひとり!? ひとりで映画とか観んの?」


「ひとりで映画観ちゃ悪いわけ!?」


「そういうわけじゃねーけど……」


「じゃあ、どういうわけ!?」


「女ってわりとひとりで行動するの嫌うじゃん」


「アタシはそういうの逆に嫌いかも。トイレもひとりで行けないのかって思う」


 そんな夏成実の言葉に、功はふと偶然見かけた夏成実の勇姿を思い出した。
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