雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「そういえば、そういうタイプかもな」


 功の物言いが、夏成実の心に引っ掛かる。


「そういえば?」


 オウム返しした夏成実を誤魔化すかの様に、功が突然話を逸らした。


「映画、一緒に観てやるよ」


「『観てやる』とか何様? 一緒に観て欲しいなんて、アタシ一言も言ってないけど?」


「奢られっぱなしじゃ嫌だから、奢ってやるって言ってんの。観たいやつ、そっちが決めていいよ」


 あまりに突然な功の申し出に、夏成実は即決する事が出来ない。映画を一緒に観るだけと言っても、功の彼女の事を考えるとしてはいけない事の様に思える。


「そっちが決めないなら、俺が決めるよ?」


「あ、ちょっと……」


 ひとり先に歩き出した功の背中を、夏成実は躊躇いながらも追いかけた。
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