雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 功が選んだのは恋愛要素ゼロのアクションもので、人気ハリウッド俳優が主演の洋画だった。「絶対字幕!」と言う夏成実に、吹き替えの方がいいと思いつつ、功も渋々頷く。

 後ろから三列目の真ん中あたりの座席に腰を下ろすと、夏成実はスマホの電源をオフにした。


「……なんか、意外だな」


「えっ?」


 功がポツリとこぼしたので、夏成実は訊き返した。


「女って、この手の映画あんま観ないじゃん」


「そう? じゃあさ、あんたが思う女がいかにも好きそうな映画って、どんなの?」


 尋ねられた功は「そりゃあ」と言ったまま、少し考える。夏成実はその間も功から視線を逸らさない。


「そりゃやっぱ、少女漫画の原作ものとか、アニメとか、恋愛もの? あと全米が泣いた! みたいな感動ものとか」


 功の答えを聞いた夏成実は、ふーんと気のない返事をして、ニヤリと笑う。
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