雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「なんだよ?」


「いかにも女子が好きそうなヤツね」


「女子って、そういうもんじゃね?」


「そういうもん、ねぇ」


 含みを持たせた夏成実の言い方に、功はイラついた。


「何が言いたいんだよ?」


 その時、場内の照明がやや暗くなり、スクリーンのカーテンが開いた。


「始まるから、後で」


 夏成実はシートに背を預け、前を向いてしまった。功はイラついた気持ちを抑えながら、自分もシートに深く腰掛ける。

 夏成実といると、いつもこうだ。ペースを奪われる。向こうが二つ年上なのだから仕方ないと、頭ではわかっているが、気に入らない。
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