雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 始まった映画は、カーアクションあり、ガンアクションあり、とにかく息つく暇もないくらいだった。

 字幕を目で追うのも必死で、功はやっぱり吹き替えにすれば良かったと思う。

 夏成実は時々、変なタイミングでクスクス笑っている事があった。思い出し笑いでもしているのかと、功は不思議だった。

 一時間四十分の映画が終わり、スクリーンにエンドロールが流れる。席を立つ客も何人かいたが、ほとんどはそのままだ。

 夏成実の隣に座っている女性が、バッグの中からスマホを取り出した。功がそちらをチラッと見た瞬間、夏成実が動いた。


「すいません、眩しいんで、それ閉じるか、出て行ってもらえます?」


 功は驚いて、声も出ない。言われた女性もバツが悪そうにスマホをバッグにしまう。すると夏成実は何事もなかったかのように、エンドロールに目を向けた。
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