雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「夏休み、イケメンとの出会いはあった?」


「ぜーんぜん。夏期講習ってだけでテンション下がって、探す気にもなれなかったーって感じ? 那子はこの休みに何かあった? あったでしょ?」


 那子の顔を覗き込んで夏成実が笑う。


「えっ? 何で?」


 思わず慌てた那子に、夏成実が驚きの声をあげた。


「嘘!? マジで何かあったの!? 何? 何?」


 夏成実に詰め寄られ、那子は考える。言うべきか……言わざるべきか……。でも、夏成実になら、話してもいいと思える那子がいた。


「昼休みにゆっくり話す」


「えーっ。めっちゃ気になるー。早く聞きたいー」


「後でね」


 そんな会話をしながら、那子と夏成実は教室へと向かう。少し離れて後ろを歩いていた功は夏成実に気付いたが、夏成実が功に気付く事はなかった。
< 314 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop