雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 国際通りを抜け、県庁前の広場にある交番に辿り着くと、帆鷹が振り返った。


「中崎、生徒手帳とか持ってる?」


「あ、うん」


 それに頷くと帆鷹は交番の扉を開けた。


「すいません、財布の落とし物って届いてませんか?」


「財布。どんな財布ですか?」


 三十代後半ぐらいに見える警察官が帆鷹に尋ねたので、帆鷹は後ろの穂香を見る。


「えっと、オレンジの革の二つ折りの財布です!」


「ちょっと確認するので、お待ち下さい」


 穂香は祈るような気持ちで、警察官の様子をじっと見つめていた。帆鷹も隣で見守っている。


「今日届いた財布の落とし物は、こちらですね」


 そう言って、警察官が奥から取り出してきたのは二つ折りの使い込まれたオレンジ色の財布。


「あ、あたしのー! あたしの財布!」


「良かったぁ! 良かったね!」


「あったぁ……」


 穂香はその場に、へなへなと座り込んでしまった。
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