雨虹～傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た～

　あーあ、穂香、完全に九条くんに誤解されちゃってる。千咲希は前途多難な親友の恋を思いやり、背中へ精一杯応援の気持ちを送った。

　私も、頑張らなきゃーー。

　そう静かに決意したところで、ようやく波の上ビーチが見えてきた。


「うわ、きれーい！」


「人工でこのクオリティ。さすが沖縄」


　穂香と帆鷹がそんな会話を交わし、後ろを振り向く。


「ね、千咲希！　古宇利島には負けるけど、ここもなかなかだよね？」

　
「そうだね」


　嬉しそうな穂香に、千咲希も笑顔で答える。人工ビーチとはいうものの、海水浴を楽しむたくさんの人で賑わっていた。どこまでも続く水平線と、吸い込まれそうなほど青く深いブルー。白い砂浜。


「沖縄で敢えて人工のビーチってのは、どうなんだろうな」

　
　帆鷹の素朴な疑問に、穂香と千咲希はハッとした。


「那覇市内では唯一のビーチ！　ってとこじゃない？」

　
　旅のしおりに一通り目を通していた千咲希が答えると「ふーん」とだけ言って、帆鷹はまた海を眺める。