雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
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成り行き上、友達になった二人。萌果の話に相槌を打つ伊万里、というのが定番の構図だった。声も小さく他人とあまり話せない、特に男子が苦手な伊万里を時には通訳し、時にはかばうように、いつも萌果がそばにいた。
「お兄ちゃんがね、言ってたんだ。弱い者いじめは絶対するなって。弱い者は守らなきゃいけないんだって。強い人にも向かっていくのが、本当の強さなんだってね」
「ふぅん」
「萌果のお兄ちゃん、世界一かっこいいんだ」
萌果の兄、今宮律樹(いまみやりつき)は瑛美高校の三年生で、空手部主将。子供の頃から空手を習っており、全国にもその名を轟かせていた。『エビ高の今宮』と言えば、空手をやっていて知らない者はいない。
「世界一?」
「そう、世界一! 強くて、優しくて、頭も良くて……」
――ブラコン。
そう思いながらも恐ろしくて口には出来ず、伊万里はふんふんと頷いていた。