雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「席替えがしたいでーす」


 そんな夏成実の意見に、教室がよりざわめきたつ。賛成派もいれば、反対派もいて、まずは多数決を取る事になった。
 結果、賛成派が反対派を若干上回り、席替えが決定。

「どーか後ろの席になります様に!!」と念を込め、夏成実はクラス委員が作ったくじを引いた。恐る恐るくじを開いて、黒板に書かれた座席の数字と照らし合わせてみる。それが見事、窓側から二列目の一番後ろで、夏成実は渾身のガッツポーズで喜んだ。

 これで隣がイケメンなら、更に言うことなしなのだが……夏成実の左隣は、大人しい眼鏡女子で、右隣は保健室登校児で名高い那子だった。


「痛っ」


 額を押さえながら恨めしい顔をあげると、そこに悪戯な笑みを浮かべる悠李がいた。


「えっ!? もしかして、アタシの前って江坂くん!?」


  恨めしい顔から一転、声を弾ませ訊いた夏成実に、


「そうあからさまに嬉しそうな顔されても困るんだけど」


 からかう様に言って、前の席に座る悠李。その背中を見て、夏成実はちょっとほっとして、無意識に笑みがこぼれた。
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