雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 放課後、那子を呼び出したのは、屋上へと続く階段の踊り場。

 少し遅れてやって来た那子を取り囲む様に、夏成実もそこに立っていた。


「こんなとこに呼び出して何の用?」


 知っていながら訊いているかの様に言い、那子が呆れた様に鼻で笑う。


「アンタのそういう態度がムカつくんだよね。見てるだけでムカつくから、学校辞めてくんない?」


 口火を切ったのは、勿論リーダー的女子だ。

 夏成実は小さく深呼吸をすると、その口を開いた。


「アタシもすげームカつく。人に辞めろって言う前に、嫌ならアンタが辞めたら?」


 夏成実の言葉に、那子も驚いた様子だったが、一番驚いていたのは誰かなんて言うまでもない。


「ちょっと、夏成実。いきなり何言ってんの?」


 リーダー的女子の取り巻き一号が、あたふたしながら言い、夏成実は真っ直ぐにそいつらの顔を見渡した。


「アンタ達さ、桜川さんに何かされたわけ? 何もされてないのに、見てるだけでムカつくとか、ホントわけわかんない。何か言いたい事あるなら、一対一で話したら?それとも、つるまないと何にも言ったりやったり出来ないわけ!?」
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