雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 ようやくキャンプ場の看板が見えて、歓声が上がる。

 サンジはみんなをねぎらいつつ、昼食の準備場所へと案内していた。開けた場所にバンガローや炊事場、バーベキュー場がある。奥には展望台もあった。


「よし、下ろすぞ」


 匡は立ち止まってゆっくりとしゃがみ、萌果は地面に足を着けると、少し顔を歪めた。


「大丈夫か?」


「うん。あり……がと」


「おう。あ、サンジに絆創膏ないか聞いてくる」


 そう言って駆け出していった匡の背中を見送り、萌果はふぅっと息を吐いた。


「ごめんね、伊万里」


「ううん、足、大丈夫?」


「平気平気!」


 笑顔で言う萌果の横を、功が通り過ぎた。


「泣きそうな顔して匡におぶわれてたけどなぁ」


「そんな顔してないっ! なんなのよ、あいつ! いちいちムカつくんだけど」


「まぁ……ね」


 プリプリする萌果を伊万里がなだめようとすると、功が振り返って二人を呼んだ。
< 77 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop