雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「飯の準備。こっち」


「わかってる!」


 相変わらずダルそうな功の声に、萌果は憎たらしげに顔をイーッとして見せた。


「あぁ、可愛い可愛い」


「ぜーったい、思ってない!」


 伊万里は、そんなやり取りを見ながら不思議に思う。本当に嫌いなら、口も聞きたくないはず。萌果はそれほど功の事を嫌いではないのかも知れない。功や匡と知り合った頃から、ずっと疑問だった。しかし直接それを訊けるような自分ではない。


「萌果ね、カレー案外得意だよ?」


 炊事場に玉ねぎ、人参、じゃがいも、豚肉などが並んでいるのを見て、萌果が得意気に笑った。


「伊万里はお料理するの?」


「ううん、あんまり」


「じゃあ、任せて! 萌果が美味しいの作っちゃうから」


 そんな会話をしていると、戻って来た匡が言う。
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