雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 穂香はさっき以上の地団太を踏んで、何も言わない千咲希の顔を見た。その顔は何故か、何か言いたそうに、目がニヤついている。


「穂香さ……あ、ううん。やっぱり何でもない」


「言いかけてやめるとか気持ち悪いじゃん。言ってよー」


「言っちゃっていいの?」


 千咲希のからかいに、穂香は「うんうん」と、急かす様に何度も頷いた。


「穂香、九条くんの事、好きなんじゃない?」


 ――はい!?

 ほんの一瞬、呆気にとられた後、ふくれっ面で穂香がムキになる。


「何でそうなるわけ!? 千咲希、アタシの話ちゃんと聞いてた!?」


「ちゃんと聞いてるよ?」

 
 対して千咲希は、至ってにこやかだ。
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