雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 伊万里と別れた萌果は、律樹と並んで自宅までの道のりを歩いていた。


「部活、入らないのか?」


「うーん、これって言うのがないんだもん」


「何かやりたい事、見つけた方がいいぞ」


「その内ね」


 律樹は呆れたように溜め息をついて、妹を見る。これでも、小学生までは一緒に空手を習っていたのだ。筋も良かったし、試合でもいいところまで行っていた。しかし中学に上がった途端に、萌果はきっぱりと空手をやめてしまった。


「空手はもう見るだけか?」


 ピクンと萌果の眉が動いたが、次の瞬間にはうふふと意味ありげに微笑んでいた。


「そうだよ、見るだけ。帰宅部ならいつでもお兄ちゃんの勇姿を見に行けるしね」


「いや、あのさ。萌果はいいけど、友達を毎日付き合わすのはどうなのって」


「あぁ、伊万里? 伊万里は萌果がいなきゃダメだから」


「なんで?」


 萌果は兄の顔をじっと見てから、再び前を向いた。
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