雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「で?千咲希が言おうとした事ってなあに?」


 ひとしきり笑った後、穂香が訊いた。


「さっき『背の高い野球部のルーキー』って、穂香言ってたでしょ?名前って知ってる?」


「えっとね……なんだったっけなー。ヤギ? 違うな……。ヤノ? あれ何だっけ!?」


「もしかして……八尾(やお)じゃない?」


「そうそう。ヤオだ! ヤオ! でも……何で千咲希がそんな事知ってるの?」


 同校の男子ネタにはうとい千咲希が知っているなんて珍しい……顔に思いっきりそう書いた穂香が不思議顔をする。

 千咲希は思っていた事が確信に変わって、その胸は懐かしさでいっぱいになっていた。


「やっぱり、たっくんだったんだ……」


 独り言の様に呟いた千咲希へと、穂香は疑問形でその名前をオウム返しする。


「たっくん!?」
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