隣に住むのは『ピー…』な上司
幸せのカタチは
「小日向課長がデート?」

「うん。デーと言うより家族でお出かけみたいな感じだったかな」


隣のデスクに座る真由香はマジメな顔をして頷いた。


「家族?」


ドキン…と震える鼓動をなんとか表に出さずに聞いた。


「小学生くらいの女の子と母親らしき人の三人で歩いてたの。仲睦まじそうで声もかけづらかった」


日曜日アウトレットモールへ行った真由香は、そこで課長たちの姿を見かけたんだそうです。


「そ、そう…」


手が震えてきそうで慌てて両手を膝の上に下げた。
真由香は椅子の背に仰け反り、「知らなかったなぁ〜」と声を漏らしました。


「課長が家庭持ちだって知らなかった。いつものっぺらぼうでいたのは、それをカモフラージュする意味でもあったのかな」


「そ、そうね。そうなのかもしれない…」


言葉ヅラを合わせて課長のいる方へ目を向けた。
相変わらず感情を表に出さず、淡々と仕事をこなし続けている。


「バツイチだって噂は聞いたことあるけど、別れてはいなかったのかもね、あの様子じゃ」


仲良さそうだったもん…と続ける真由香の言葉に胸が痛んだ。


やっぱり、もなちゃんは課長の子供だったんだ。


(それならそうと認めてくれれば良かったのに……)


下手に勘違いするなとか言わなくてもいい。
私は課長の家族を不幸にする人間じゃない。


見くびられたのなら憤慨。
一人で生きてきたからこそ、守るべき人がいることには敏感なのに。


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