隣に住むのは『ピー…』な上司
オフィスへ行くんだ。今日も。
だって、あそこに行く限り、私は課長と永遠に仕事で繋がっている。
上司と部下でいられる。
その関係だけでも、十分過ぎるくらい幸せだ。



(今朝も出てこないんだね。課長……)


今頃はまだベッドの中?

その傍らにあの人はいるの?

それでも、オフィスへは来てよね。

私は課長の顔が見たいからーー。



「洗濯してしまおう。干して、それから朝ごはんも食べよう!」


一人だけど元気出そう。
今まで通りの日々を思い出せばきっとできる!



洗濯機が回っている間に朝ごはんを済ませた。
服を着替えて、洗濯物を干しにベランダへ出たら……



『ピピッ!』


キレイな鳴き声が聞こえて耳を疑った。

まさか……と思いながら防火板の隙間を覗き込みました。



(ピーチ!)



白っぽい頭と青い体。
薄いオレンジ色のクチバシとピンク色の足が見えます。



(どうして……)



声も出ずに眺めていた。
洗濯物を干すのも忘れて呆然としていた。



「ピーチ」


課長が小鳥を呼びました。
口笛を吹くと、それに答えるかのように鳴き声が響いた。



『ピルル!キュルルル!』


嬉しそうにカゴの中を飛び回っている。

小さく鳴っていた心音がドキドキ…と音を立て始めました。

以前のような日常が戻ってきたみたいで、思わず呼んでいた。



「小日向課長!」


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