隣に住むのは『ピー…』な上司
低くてドスの効いたような課長の声を初めて聞きました。
本気で怒っている彼を改めて見た。


「もなのことは可愛いよ。ワガママを聞いてやるくらいの懺悔は俺の心にだってある。
だから今回のことも嫌々ながら引き受けた。
一時的なことだと思うからこそ我慢してる。
だけど、一緒に暮らしたいなんて思わない。
自分の気持ちを押し殺してまで、一緒にいれるほど俺は優しい人間じゃない。

一緒にいて楽しいと思うのは藍だけだ。心から安心して側にいれるのも君だけだ。
藍がピーチを預かって欲しくないなら返す。どんなに毛を抜いてボサボサになっても、藍が側にいるならそれでいい!

引き取りに来いと言って電話しよう。それで俺のことを受け入れてくれるのなら…」



ズボンのポケットからケイタイを取り出した。
ロックを解除しようとする課長の手を思わず止めていました。




「待って下さい!!」



毛の抜けたボサボサの小鳥なんて見たくない。
キレイな胸の毛も羽の色も、あのままの小鳥がいい。


私の手の中で目を閉じた。
あの小鳥のままでないとーー。



「課長は横暴すぎです。フェンスを乗り越えてきたり、いきなりピーチちゃんの世話を頼んだり。お陰で私はいつも振り回されてばかり。面食らってばかりで今も……」


私のことを試そうとしている。
自分のことを受けれるかどうか、こんな形で試している。


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