隣に住むのは『ピー…』な上司
小鳥がボサボサになるのを覚悟して、「返して欲しい」と言う訳ないと思っているくせに。


「それくらい藍に好かれたいんだ。他のことはどうでもいいくらい、俺は藍のことだけが欲しい。
何が好きかと聞かれたら、「もな」でも「ゆうな」でもなく『藍』だ。

藍がいたらいい。家族を作るのなら藍とがいい。君が笑うとホッとする。心を投げ出して、自分が甘えてみたくなる。

人間関係なんて煩わしいだけだと思ってたけど違う。藍とはずっと一緒にいたい。
俺を安心させてくれる君と、ただ時間をかけて生きてみたいだけなんだ」


一人きりだった私に挨拶はお互い様だと教えてくれた課長。

これからもそういう関係をずっと続けていってもいいの……




「課長……」


私も課長と生きたい。

甘えたり崩れたりしてる課長と、ずっと一緒にいたい。


「真史さん」と呼んでみたい。

いつまでも恋をして、いつか愛を育んでみたい。




「ピー…」

「しっ!」



唇を止められた。
足音が聞こえ、二人して休憩室の隅に隠れました。


どこかの部署の人が入ってきて、缶コーヒーを買って逃げる。
その背中を確かめて、課長が大きく息を吐いた。



「はぁ…」


また止められてしまった。
「ピー…」という放送禁止用語みたいに。



「…っもう、課長ってば」


何が言いたかった忘れてしまうじゃない。
大事な時ばかり、言葉を止めたりいないで。

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