隣に住むのは『ピー…』な上司
必要以上に強張った顔をしていたのかもしれない。
課長は「なんだ」と呆れた様子で、泰明の方へ振り向きました。


「初めまして。白鳥さんの上司で小日向と言います。同じマンションに住んでいる隣人です」


自己紹介を兼ねて、隣に住んでいることを主張した。
泰明はつまらなそうな顔を見せて、自分も自己紹介を始めた。


「白鳥泰明と言います。父に頼まれて藍の様子を見にきました」


嘘をつく彼の顔を睨みつけました。
泰明はそんな私に気づいたのか、はっ…と短く息を吐いた。


「会社の人が隣に住んでるなら安心だ。父には心配しないよう話しておきます。じゃあ僕はこれで。藍ちゃん、また家に帰ってこいよ」


「う……」


ハッキリと声には出さず頷いた。

泰明は軽く頭を下げ、課長の横をすり抜けていった。



「いいのか?」


去っていく背中を目で追いながら課長に聞かれました。


「いいんです。従兄弟とは言え、あまり付き合いもありません」


頑な態度を示す私に違和感を覚えたのかもしれない。
課長は泰明の言葉を使い、私に尋ねてきた。


「家に帰ってこいと言ってたような気がするが」

「それは、私が叔父の家でお世話になってた時期があったからで……」


口走ってしまった言葉を後悔した。

ハッと見上げると課長の視線と重なってしまった。


ギクッとする。

私の顔を見ている目が、少しだけ険しいように見えたから。


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