隣に住むのは『ピー…』な上司
お父さんもお母さんも生きていた頃がいい。

あの、幸せな時間に今の私を返してーーー!!





「白鳥くん?」


背後から聞こえる声に振り向いた。

スーツケースを引っ張りながら歩いてくる人に気づいて、走り出すようにしがみ付いた。




「たす……けて……」



何もされてなんかない。
でも、過去が私を襲う。


課長のワイシャツに沿わせた手が震えていました。
胸にすがった肩がブルブルと揺れている。


課長は驚いたように無言でいた。
抱きつく私を振り解くこともなく、泰明の方に目を向けました。



「関わらないでやって下さい。貴方がどんなに謝罪をしようとしても、彼女にとっては恐ろしい記憶を揺り起こすだけにしかならない。
懺悔を抱えたまま人生を送って下さい。何よりもそれが一番の謝罪になります」


毅然とした態度で言い含めてくれた。

泰明はぐうの音も出さずに、その場にしゃがみ込んだ。



「ごめん……藍ちゃん……」


涙の混じったような声をぼぅっとする頭で聞いた。

背中を向けたままで、泰明には一切の視線も向けれなかった。



歩き始める靴音が聞こえだしてホッとした。

気が遠くなりそうな私を小日向課長の手が包んでいました。






「……行ったぞ」


声が聞こえて息を吐いた。

乱れていた心臓の音がトクン、トクン…と整い始める。



「大丈夫か?」


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