隣に住むのは『ピー…』な上司
部屋の中に入ると課長は直ぐにカゴの中に呼びかけた。


「ピーチ」


名前を呼ばれた方は『ピピッ!』と短く鳴いて喜んだ。
まるで小躍りでもするかのように、カゴの中をウロウロしている。


「毛ヅヤも良くなったな。鼻水も止まってるし声も枯れてない」


観察しながら眺めている。

その課長から少し離れて、私は彼と小鳥を見ていました。



「出してやってもいいか?」


課長の不意な質問にハッとする。

昨日の夜、ネットで調べた『放鳥』だと気づきました。



「ど、どうぞ」


初めて目にする。

小鳥は一体どんな動きをするんだろう。


「ピーチ、おいで」


扉をスライドして上げると、課長はそう言って手を差し込みました。


『ピッ!』


まるで飼い慣らされた犬のように手の甲に飛び乗る小鳥。

手はカゴの外に引き出された。

上に乗った小鳥は、バサバサと翼を広げた。



トン…と足で蹴って飛び上がった。

勢いに乗った小鳥の体が、空を切って羽ばたく。


部屋中を何度か旋回して回る。
息もつけないくらい速いスピードで、見ているのもやっとです。


ビックリしたまま見入っていました。
そしたら課長が呼び止めた。


「ピーチ」


ピュピュッ!…と口笛を吹くと、急降下して降りてくる。


滑り込むように課長の肩に止まった。

左から右へと、背中や肩を移動している。

< 80 / 151 >

この作品をシェア

pagetop