隣に住むのは『ピー…』な上司
「君が良ければ俺の女にならない?俺のことは平気みたいだし、ピーチも君が気に入ってるようだから」


「えっ……」


……と言うか。


「ええっ!!??」



耳を疑いました。


課長は何を血迷っている!?

私は男がニガテだけれど!?



「か、課長……」


部下をからかうのは止めよう。
私は隣に住んでいる、ただの宿借りみたいなもんです。

本命は別にいるんでしょう。
それなのに、そんな言葉を言っていいの………



「ま、間に合ってますっ!」

咄嗟に断った。

怖いという気持ちは不思議と湧かない。

ただ、信じられない。



「課長の女にはなりません!」


なりませんと言うよりなれない。
近づかれるとそれだけで卒倒する。



「そう言わずになれよ」


そっ…と肩に手が触れた。



「ほらな、平気だ」


「か、課長…!」


怖くない。
怖くないけれどやめて。



「やだ……離れて下さい…」


涙が溢れてきそうだ。
緊張するあまり、手まで一緒に震えだした。


『ピピッ!』


眠りかけていた小鳥が叫ぶ。


「よしよし、ピーチ」


課長が優しく声をかけて受け取る。

カゴの中に戻し、荷物を一まとめにしました。




「…今の、考えておけよ」


部屋から出て行こうとした時、振り向いた課長の口から出た言葉。

小日向真史という人が、ますます謎めいてきました。




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