不思議な彼女と吃音な俺
「なんで謝るの?本当に私のこと、嫌いなの?」

彼女は飼い主に怒られた子犬のような悲しい顔を俺に見せた。俺は慌てて首を横に振った。

「じゃあ、好き?」

むせた。本当になんなんだ、この子は。俺は頭の中で色々考えた。新手の詐欺なのか、どこか変な店に連れていかれてしまうのか、それとも、罰ゲームでやらされてるだけなのか。いや、それにしたって俺の名前や、吃音のことまで知ってるなんてどう考えてもおかしかった。でも、俺は本当に彼女の顔に見覚えがなかった。こんな可愛くて、積極的な子だったら絶対に忘れないはずだ。

「大丈夫?水、飲む?」

彼女は自分の鞄からペットボトルの水を取り出すと、俺に差し出してきた。少し飲んだ形跡がある。

―か、間接キス!?

馬鹿な俺は馬鹿なことを無意識に考えてしまう。男という生き物は本当に単純で、馬鹿な生き物だ。
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