オトシモノ
もう外は薄暗かった
彼女と二人きりの教室で、マナーモードにしていたスマホがブルルッと震えた
ポケットから取り出し、画面を見るとバイト先からだった
僕はまたスマホをポケットの中に戻す
今は他のことなど、どうでもいい
僕は再び彼女に向き直ると、先程の質問の答えを待った
うつむいたままの彼女は何も言わない
代わりにずっと動かなかった僕の斜め前の席から、少しずつこちらへと近付いてくる
お互い向き合う形となり、僕よりも数十cm下に顔がある彼女は
泣きはらした目が痛々しかった
夏服から伸びた細く青白い手が僕の体を包む
僕の胸の辺りへ顔をうずめ、そこから彼女はまた動きを止めた