君がうたう七つの子
僕は予想外の展開に驚いて、固まったままの腕を素早く背中に回して、僕から視線を外さない少女に向き直った。

「ごめん、失礼なことをしたね。でも、お供えを盗もうとしたわけじゃあないんだ。

ただ、虫がついてたから掃おうと思って」

少女の言葉に多少の引っ掛かりがあったけど、とりあえず泥棒という勘違いを正してもらおうとして、思いついた言葉を並べる。

もちろん嘘なのだけど、相手に嘘が嘘だとばれないように、目を少女と合わせて。

すると、彼女は僕をじっと見ていた目を大きくした。

非難するような感情を浮かべていた目には、今は驚きと喜びが浮かんでいた。

「君、私の事が見えるんだね。それに声もきこえてる。」

・・・・おかしい。

会話が成り立っていない。

それに、先ほどまであった険のある声はどこへいったのか、目と同じように声まで柔らかくなっている。

どうやら、彼女にとって僕の言葉の真偽よりも、僕が少女を認識しているほうが重要らしい。

当たり前のことなのに何故そこまで喜ぶんだろう。

もしかして、学校でいじめられているのかな。

幽霊みたいに見えない聞こえないとか。

などと彼女について考えていた僕に対して、一瞬でその思考を止める程の衝撃的な言葉を、彼女は突然投げつけてきた。

物凄い豪速球、加えて超がつく変化球を何食わぬ顔で、さらりと。


「どうも初めまして、泥棒さん。私は幽霊です。」


そう言って彼女は近づき、笑顔で僕の肩に触れようとする。

しかし、その手はするりとすり抜けていき、僕の肩が感じたのは触れられた感触ではなく、微かな冷気だけだった。





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