君がうたう七つの子
「そうあの日は、あの夜は珍しく妻とあの子が、レイが喧嘩していた。

高校の進路について二人の意見が分かれたことが原因だった。

私は黙ってそれを見ていた。

レイの気持ちもわかるし、娘を心配する妻の気持ちもわかるから、一人右往左往していたよ。

その高校が少し離れていてね、夜遅くなったらどうするのなんて言って妻は怒っていたよ。

議論に熱が入って、沸騰しそうになった時、レイは頭を冷やしてくると言って家を出た。

あの状況で一番冷静だったのはレイだった。

傍観者だった私こそがそうあるべきだったけれど。

それは今思っても遅い事だね。

もう過ぎた事だし、終わってしまったことだ。


悲しいことに。苦しいことに。辛いことに」

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