君がうたう七つの子
「レイが外に出ていったのは夜だったけれど、行き場所はまたいつもの土手だろうと言って、それまでせめて夫婦の意見はまとめておこうとレイをそのままにした。


それをどれだけ今後悔しているか。

・・・・・それからいくら待っても、レイは帰ってこなかった。


その日は局地的な雨が降っていてね、川が増水していたんだ。

そう、君の思っている通りそれが要因の一つだ。

大きな要因は、そりゃあ私たちの至らなさだろう。

それをニュースで注意喚起しているのを二人で見たけれど、どちらも危険だとは思わなかった。

日常にあまりにも密接に傍にあったから、危険だとは思いもしなかったんだよ。

まったくもって、馬鹿な話だよ。目も当てられない程の間抜けな話さ。

自然には危険がつきものだというのに。

私達はそれを失念していた。

レイは身をもって、そして私たちはレイの死をもってそれをまざまざと知らされたよ。

そしてその後警察が言うには傍に滑ったような跡があるから、事故だろうと。

近くにあったという傘を渡されながら言われたよ

それはレイのお気に入りのもので、内側には晴天の空が描かれていたんだ。

これで雨の日も晴れ晴れだ!なんて言って喜んでいたよ。」

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