君がうたう七つの子
「―――お母さんの事はいいの」

その言葉に彼女の表情が固まる。

僕はやっと彼女の心が見えたような錯覚に陥って、それをもっと見せてほしいと言葉を続ける。

「レイのお父さんが話していたんだ。

君との喧嘩の事を今でも悔いてるって。

それで、心を病んでしまっているって。

それなら、僕が仲介をするよ。

レイの言葉を二人に伝えればきっと―――」



「きっと、何」

小さく咎めるように吐き出された声に、先程までの柔らかいものはなく、暗く低いものだった。

表情も、今まで見たことが無い悲しみに満ちていて――

「きっと二人も救われるって?

私への後悔も無くなって、お母さんも元気になれるって?

なんでそうならなきゃいけないの。

いいじゃないこのままで」

「でも、そうしないとお母さんは―――」



「いいじゃない!」

叫ぶようにして声をあげる彼女に、今にも泣きそうなのに、怒りも見えるその表情に僕は我に返る。

必死にレイの心の奥底を掘り出そうとしていた自分に気付いて、しまったと後悔する。

レイ本人の気持ちを考えずに話を進めていたことを謝ろうとするが、彼女は止まらない。
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