君がうたう七つの子
「レイ―――」

「何が悪いというの!

ずっと後悔して生きていく、いいのよそれで!

そりゃあ私もそんな二人を見るのはつらいよ。

毎日毎日、あの日の事に後悔して泣いているお母さんと、それを支える泣けないお父さんを見るけれど、それはどうしてもなれない。辛い。


でも、そうしないと、後悔が無いと忘れてしまうかもしれない。

私が死んだことはおろか、私がいたことさえも!!」

坂を転がっていく石のように、自制が効かなくなっているのか、彼女も我を忘れているようだった。

僕は彼女の見たかったはずの心に隠された闇に触れて、怖気づくように押し黙ってしまう。

「しょう君はわからないだろうけど、生きているからわからないだろうけど、忘れられるのって怖いんだよ

さっきだってそう。

気づかれないなんていつもの事で、家にいても、私が必死に二人に何を言っても気づいてもらえない。

そのうち、私が死んだ事さえ気づかなくなって、私の存在も忘れられるんじゃないかって

そんな考えが頭の片隅に浮かんで、今ではもうそれが頭の中を、心の中をぐるぐる回ってるの」

そう言って今度は諦めたように笑う彼女に、臆病な僕はどうすればいいのか考える。

そんなことあるはずがないって、僕も、きっとレイだってわかっているはずなのに、それが言えない。

なにか言ったら、さっきみたいにレイをまた傷つけてしまうんじゃないかと怖い。

考えるなんて、ただ彼女に何も言えない惨めな自分を隠すための言い訳に過ぎない。
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