君がうたう七つの子
人とこちらから深く関わらずに、別れが来ればそれに流されて忘れる。

今回もそうすればいいだけの話で、それだけの話だ。

そうするために、まずは忘れるために、レイを描いた絵を手元に置いておくことは出来ない。

見たら思い出してしまうから。

笑って、からかって、拗ねて・・・・

そうやって過ごしたあの日々を。


せっかく描いたのに勿体ない気もするが、それも仕方ない。

―――そう仕方ない。

僕は机の上に置いてあるスケッチブックを手に取る。

重さなんて変わらない筈なのに

紙の重さしかない筈なのに、何故だか今はずっしりとする。

だがそれは関係ない。

これを捨てる。

簡単なことだ。

少しの動作でそれは完遂できる。

なのに―――――

僕はどうしてもそれができなかった。

体はそれを拒絶するかのように動いてくれない。

まるで、昨日レイに別れを告げられた時のようだ。

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