君がうたう七つの子
「―――――は?」

あまりにも突飛な言葉に顔をしかめる。

ふざけているのかと彼女の表情を見てみるが、向こうはいたって真剣な面持ちで、こちらの返答を待っている。

うーん、穏便になんて思わず、ここははっきり断ったほうがいいかもしれない。

下手に長引かせたら、それこそ厄介なことになりそうだ。

「申し訳ないけど、それはできないよ。

僕に何のメリットもないし、君にそこまで付き合う理由もないしね。」

そう言って僕は最終手段である、彼女を文字通り通り抜けようと足を動かし前に進む。

「じゃあ、君のお願いをなにか一つきくよ!

私幽霊だけど、死んじゃったけど、何か出来ることがあると思うんだ。

だから、お願いだから――

私を一人にしないで!」

必死さがにじみ出る言葉に、僕はあと四、五歩で通り抜けることになる位置で、踏み出し続けていた足を止めた。

この停止は、決して彼女の強い思いや、かわいそうなどの同情によるものではない。

決して彼女に心を動かされたのではないのだ。

「うん。そういうことなら、君の案に乗っからせてもらおう。

取引成立だね」

そう、取引。

これはお互いに得のある話だ。

これだけは、強く言っておこう。断じて私情に流されたのではない、と。

誰とはなしに、心に釘を刺して、僕は彼女の案に賛同した。


こうして中学三年生の夏休み、僕と幽霊少女との物語が始まった。
 
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