君がうたう七つの子
「すいません」

僕は無理やり家に入ることに謝りながら、レイのお父さんを押しのけてレイの家へと入り込む。

レイのお父さんが、扉を開けたまま話してくれたから助かった。

もし閉まっていたら、開けなきゃいけないから無駄な時間が掛かってしまうところだった。

そう思いながら、あらかじめすぐ脱げるよう紐を揺るめていた靴を脱ぎすて、廊下を走るようにして進む。

「な。何をやっているんだ。

待ちなさい!」

後ろではやっと状況が飲み込めたらしいレイのお父さんが、慌てたように靴を脱ごうとしているが、どうやら混乱も相まってうまく脱げないようだ。

毎回履くたびにしっかり紐を結ぶタイプなんだろうなと、片隅で考えながら扉を次々に開けていく。

トイレ。洗面所と浴室。リビング。

目当ての場所と人物にたどり着けないことに焦りながらも、最後の扉を開ける。


見つけた。

畳の和室。

小さな仏壇には僕のよく知る彼女が、けれど知らない人のようにも見える彼女の写真が置いてある。

その前にうずくまるようにして座り込んでいる女性――レイの母親だろう――と、立ってこちらを驚くようにして、赤くした目をむけるレイの姿があった。
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