君がうたう七つの子
描き始めてどれくらい時間がたっただろうか。

ふと辺りを見回すと、あんなに僕を焼き焦がさんと輝いていた太陽は、その力を弱めていた。

土手の上の道には塾帰りの学生、外で遊んでいた子供たち、夕飯の事を話しながら手を繋ぎ歩く親子の姿。

それらのどれもが、夕方の空気を醸し出している。

僕もそろそろ帰ろうかと思いながらぼんやりしていると、ふるさとのメロディーがどこからか聞こえてきた。

この町では、子供へ帰りを促すメロディーはふるさとなのか。

いい曲だものなと、その音に耳を澄ませていると、それともう一つ違うメロディーが聞こえだした。

最初は小さかった音が、その姿がはっきりと見えてくるのと比例するように大きくなっていく。

聞こえる歌声と、僕の斜め前に現れた背中を向けている人物は、間違いなく昨日の彼女だった。

僕は変わった登場をしてきたことに、幽霊だからと無理やり自分に納得させて、遅れて現れた彼女に一言注意をと思い、声を掛けようとしたけど、それをすぐにやめる。

きこえてくる彼女の歌声があまりに透き通って、柔らかくて、優しくて、綺麗だったから。

音は所々外れていて、上手とはとても言えないものだけど。

何故か心地いいと思えた。
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