君がうたう七つの子
「お父さん、お母さん

二人とも喧嘩はしてもいいけど、ちゃんと仲直りしてね。

そのままにして、なあなあに終わらせたりしないで。

仲良く一緒に生きて。

じゃないと私怒るから。

凄く凄く怒るから」

そして彼女は大きく息を吸い込み、乱れていた呼吸を整えようとする。

僕はそれを見て、最後が近づいていることに気付く。

彼らと彼女の別れがもうすぐそこに。



「私幸せだった。幸せだよ。

だから、お父さんとお母さんも幸せになって。

私を忘れないって言ってくれてありがとう。

すごくうれしかった。

私を―――――――――――――――

私を、この素敵な世界に、温かいこの町に、優しくて幸せなこの家族に。

会わせてくれてありがとう。

産んでくれてありがとう。

大好きだよ。二人とも」

そう締めくくった彼女は、父親と母親それぞれをぎゅっと抱きしめる。

透けてしまわないように気を付けて、それでも力強く抱きしめる。

そして僕に向き直ると、彼女は言った。

「しょう君。

私は成仏していなくなったって伝えてくれる?」

僕はそのお願いを静かに頷き、引き受けた。
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