君がうたう七つの子
彼女はなにも言ってこなかったが、目は口ほどにものをいう。

なんとなく寂しいんだろうなとはわかった。

それに、捨てられた子犬のような目を、まさに今体現している彼女を冷たくあしらうなんてことは動物好きである僕には出来ない。

僕は彼女からまたもや視線を外し、目の前の川を眺めた。

「ここの景色っていいよね。

草の緑と川の透き通った青が綺麗で

そりゃあ暑いけど風は気持ちいいし、人の声もよく聞こえる」

「え、うん。そうだね」

「だから、ここの風景画を描くのもいいかなって。

暫くは今日みたいに過ごそうと思うよ。

暑いけど、君が紹介してくれたここは居心地がいいし。

それに君の歌もきけるしね」

彼女の方に視線を戻すと、僕の言葉に彼女は目を細くしてそれから笑った。

底抜けの笑顔で。

「そっか、そっか!歌をきかれるのは少し恥ずかしいけど、君が好きなら沢山歌うよ!

私この歌大好きだから!」

そう言ってまた歌いだす。

からす なぜ鳴くの
からすは山に
かわいい7つの子があるからよ
可愛 可愛と烏は啼くの
可愛 可愛と啼くんだよ
山の古巣へ 行って見てごらん
丸い目をした いい子だよ
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