君がうたう七つの子
僕は歌う彼女をじっと見つめた。

風にあわせて揺れる髪が、瞼から落ちるまつげの影が、どこまでも響いていきそうな澄んだ声が、とても綺麗だと思った。

歌い終わった彼女がこちらを見て、少し恥ずかしそうにはにかむ。

僕もつられて笑った。

「やっと笑ったね。ずっとしかめっ面だったから、顔の筋肉が固まっちゃっているのかと思ったよ。

そっちの方が断然いいよーーーえーと、」

「沢村」

「下の名前は?」

「・・・」

「なーまーえーはー?」

「・・・・・・・しょう」

「なんて書くの?」

「・・・・・・・・・平仮名でしょうだよ」

「ふぅん、珍しいね。

わかった、しょう君ね。

恥ずかしがらずにすぐ言ってくれればいいんだよ。

やっぱり照れ屋さんだなぁ。

私はレイ。あ、幽霊のレイじゃないよ!

そんなダジャレは言わないからね!本名だから」

「あぁ、そう。

で、名字は?」

もはや彼女の中で照れ屋と位置づけされている事には、もう何も言わなかった。

言っても無駄だろうとひしひしと僕の直感が告げている。

ならば無駄なことはするまい。

時代は省エネルギーの時代なのだ。

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