君がうたう七つの子
「教えなーい。

だって教えたら、下の名前で呼んでくれないでしょう?

だから内緒」

「わかったよ」

片目をつぶりながら言う彼女にため息をつきながらも了解の意を伝えると、彼女はにやにやしながら顔を近づけてくる。

「んー?誰に言ってるのかなー?」

実に苛立ちを感じさせる声だ。

さっきみたいに、しゅんと大人しくしていればいいものを。

僕が心の中で愚痴垂れていることを知らない彼女は、僕が顔を背けると回り込んできては

「ほーら、誰に言ってるのか言わないとわかんないよー」

と僕を挑発するように畳み掛ける。

このまま何も言わずに帰る事もできるが、そうすると最悪彼女の機嫌を損ねて被写体を辞めるかもしれない。

それは僕にとっても痛手だ。

せっかく手に入れた機会をみすみす自分でパァにすることは避けたい。

だからここは大人の対応で、冷静にいこう。

でも、イラッとしたのでちょっとした反撃も忘れずに。

「わかったよ、レイ」

「ふむ、それでよろしい!」

嫌がると思って呼び捨てにしてみたのだが、効果はこれっぽっちもなかった。

むしろ僕のほうがダメージを負ってしまった。

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