君がうたう七つの子
そんな僕の雰囲気に察したのか彼女は慌てて新しい話題にうつる。

一番好きな花はススキなんだとか

風に揺れるススキの音が、まるで風の音みたいなんだよとか

ここにも秋になったらススキが生えるんだとか。

「ススキは花じゃないよ。

イネ科の植物だ」

僕が呆れたように笑うと、戸惑った顔をしていた彼女の顔に安堵の表情が現れて、柔らかいものになった。

そこまで安心するとは、よほど僕はまずい空気を出していたのだろうか。

こちらが相手を考えていたのに、逆に気遣われるとは情けない。

そもそも、僕ってそんなにわかるほど表情に変化でるのか。

周りにはポーカーフェイスだと言われていたはずなのに。

一部では能面とも呼ばれていた。

前の学校の奴らが見たら驚くだろうか。

それとも、僕が変わったんじゃなく、彼女だからわかるのだろうか。

彼女はというと、僕が考え事をしている間もふにゃりとしていた顔を、何を思ったか頭を振って払い、威張ったような表情を浮かべ、偉そうに胸を張る。

その様は周囲の子供に舐められないようにするガキ大将のようだ。

< 24 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop